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法人税率引き下げに代わる「課税ベースの拡大範囲」とは?

カテゴリー: 税理士
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先週から連載しています「平成28年度税制改正:ワンポイント解説シリーズ」では、
2〜3分でスッキリご一読いただける税制改正解説を提供しております。

今回は、「法人税率の引き下げ」と一緒に話題にあがることの多い、
「課税ベースの拡大」の意義と、今年度税制改正における具体的な影響について解説いたします。

『課税ベース』とは、「課税対象とされる範囲」のこと

ごく単純に申し上げて、一般的な税額計算は「【課税対象額】×【税率】」で算定されることが多いといえます。
例えば、法人税の計算でいえば、利益(課税対象額)に法人税率(税率)を掛けて税額を計算することは典型例です。

このような税額計算において、「課税対象の範囲」を指して「課税ベース」と総称されます
(※ ただし、税法上に定義された厳密な用語ではなく、一般用語である点にはご注意ください。)

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なぜ課税ベースを拡大する必要があるのか?

現代社会では、企業活動の国際化が進むなかで、各国において租税制度の整備が加速している状況にあります。
実際、日本においても(欧米諸国より比較的高いとされる)法人税率の引き下げは長年の課題とされていました。

しかし一方、国家にとって税収入は『活動の財源』であり、いたずらに減税を重ねることは「財源を失う」ことを意味します。
そのため、国家財政を健全に運営するためにも、ただ単純に税率を引き下げればよいわけではなく、
税率を引き下げることによる税収減については「課税範囲を拡大する」ことで補填することが必要です。

これを先述の計算式「【課税対象額】×【税率】」にあてはめますと、
【税率】を引き下げることによるマイナス影響を補うため、【課税対象額】を拡大・増加させる必要があるわけです
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これが、法人税率引き下げの代わりに課税ベースを拡大することの意義です。
そのような意義をふまえて「平成28年度税制改正大綱」をご覧いただくと、その趣旨を明瞭に読み取ることができます。

こうした状況の下、経済の「好循環」を確実なものにするため、税制においても、企業が収益力を高め、前向きな国内投資や賃金引上げにより積極的に取り組んでいくよう促していく必要がある。
こうした観点から、成長志向の法人税改革を更に大胆に推進し、制度改正を通じた課税ベースの拡大等により財源をしっかりと確保しつつ、法人実効税率の「20%台」への引下げを実現する

(出典:自由民主党「平成28年度税制改正大綱」)

 

平成28年度税制改正における「課税ベース拡大」の対象とは?

課税ベースを拡大することは「従来は課税対象でなかった範囲に課税する」ことを意味します
法人税でいえば「当期純利益に一定調整を加えた金額」が「課税ベース」に該当しますので、その拡大方法としては、
「当期純利益以外の項目へ課税する」「一定の加減算について加算項目を増やす(あるいは減算項目を減らす)」などが想定されます。

以下、主要な法人税改正項目を解説してまいりますが、
そのようなイメージを念頭に置いていただくことでより理解が容易になるかと思います。

① 外形標準課税の拡大

外形標準課税とは、(法人の利益額と無関係に)事業そのものに課税される税金であり、平成16年(2004年)に導入されました。
しかしながら、これは赤字企業にも課税されることを意味していますので、担税力などの観点から一定の配慮が講じられています。

具体的には、下図の通り、利益以外の項目に課税される「付加価値割※」「資本割」を徐々に増やしていく形となっています。
平成28年度改正においても、引き続き「所得割」の割合が減少し、「付加価値割」「資本割」が拡大となります
(※ 付加価値割=付加価値額(単年度損益+給与支払額+支払賃借料+純支払利息費用)に課される税額。売上高ー支払事業費用に近い。)
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ただし、中堅企業にとって著しい増税負担とならないように一定の配慮もなされています。
すなわち、付加価値額30億円以下であれば、平成28年度は税率増加による負担増加額の3/4を軽減(税額控除)することができます。
来年度以降も平成29年(2/4)、平成30年(1/4)と段階的に縮減しながらも軽減効果を受けられます。

(なお、付加価値割に関する軽減措置(付加価値額30〜40億円)については、中小企業にはあまり想定されないため解説を割愛します)

② 繰越欠損金控除の見直し

繰越欠損金控除については、外形標準課税の拡大影響(上述)もあって平準化に対する配慮も見受けられます。

具体的には、下図の通り、繰越欠損金の控除割合(税務上の所得金額のうち繰越欠損金と相殺できる割合)については、
当初よりもやや「緩やか」な変化となるような改正が施されています。
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具体的には、平成28年度であれば「改正前よりも相殺割合が減った=相殺可能額が減った=課税対象額が増えた」といえますし、
平成29年度であれば「改正前よりも相殺割合が減った=相殺可能額が増えた=課税対象額が減った」といえます。

③ 租税特別措置の見直し

従来の予定通り、「生産性向上設備投資促進税制」が廃止となります
これはもともと「従来と比べて年1%以上の生産性向上に寄与する先端設備」や「投資収益率15%以上の生産ライン刷新」などの条件で、
通常に比べて費用処理(減価償却)を早めることを認めているものでした。

④ 減価償却の見直し

「建物附属設備」「構築物」の償却方法が、「定額法」へ一本化となります。
この影響により、定率法と比べて、費用処理のタイミングが遅くなる傾向が強まることが想定されます。
(※ただし、鉱業用減価償却資産については引き続き「生産高比例法」が認められる見通し)
このように、今年度の税制改正における影響は広範におよびますので、現時点からその影響は抑えておきたいところですね。
今回の解説もふまえて、次回は「今年度見直される租税特別措置」について解説してまいります。

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▼平成28年度税制改正:ワンポイント解説シリーズ▼
第1回:3分でわかる!消費税の軽減税率で話題の「インボイス」って何?
第2回:改正間近!法人税率引き下げに代わる「課税ベース拡大」の対象とは?(今回)
第3回:一発図解!今年度末で期限を迎える「租税特別措置」を総まとめ
第4回:税制改正の新時代!「企業版ふるさと納税」とは何か?

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