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意外とシンプルな「融資格付」の評価基準。

カテゴリー: 税理士
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先週から解説をはじめました「税理士のための融資相談入門」シリーズ、
こちらでは官公庁資料等を紐解く形で、金融機関の融資判断上のポイントを解説しています。

前回は、金融庁が検査指針として用いている「金融検査マニュアル」を深く理解することで
「金融機関の行動規範を知る」ことの重要性を解説いたしました。

今回は、さらに「金融検査マニュアル」の具体的な内容に踏み込んで、
金融機関による融資格付の評価基準」について解説してまいります。
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金融機関にとっての「融資格付」の意義&「金融検査マニュアル」との関係

中小企業にとっての借入金(融資調達)は、金融機関の立場からは「貸出金」を意味します。
もし回収が難しいようであれば、回収不能分を「貸倒引当金」や「評価損」として損失計上することになるわけです。
そのため、金融機関はこれらの債権の回収可能性を定期的に評価する必要があります。

また、金融機関の債権評価・管理態勢は、その健全性をモニタリングする金融庁にとっても大きな関心事であるといえます。
そのような背景もあって、「金融検査マニュアル」では「資産査定管理態勢」が重要な検査項目の一つとして位置づけられています。

ここまでの経緯からわかる通り、金融機関にとって大切なのは「債権の回収可能性」といえます。
実際、「金融検査マニュアル」でも、融資格付(債務者区分)は以下のように定義されています。

「債務者区分」とは、債務者の財務状況、資金繰り、収益力等により、返済の能力を判定して、
その状況等により債務者を正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先及び破綻先に区分することをいう。

(出典:金融庁「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル」)

以下、長々と「融資格付」について解説が続きますが、
融資格付の目的は、『債権を回収できるか否か?』の評価である」というシンプルな原則を抑えておけば、簡単に理解できます。

 

「融資格付」の評価基準

上記の通り、金融検査マニュアルによれば、「債務者区分」は債務者自身の返済能力を意味しています。
その区分は、返済力の高い順番に「正常先」→「要注意先」→「破綻懸念先」→「実質破綻先」→「破綻先」と区分されます。

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正常先

正常先とは、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者をいう。

(出典:金融庁「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル」)

一般的に、黒字企業&資産超過であって、借入金返済期間が異常な長期間に及ぶものでない企業が該当します。
また、形式的には「要注意念先」に該当するものの、正常先と認められるケースも存在します(後述)。

要注意先

要注意先とは、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者をいう。

(出典:金融庁「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル」)

上記の文章は非常に読み下しにくいのですが、この定義には「要管理先」と「その他要注意先」の2つの区分が含まれます。

■ 要管理先
・『金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者』
・『元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者』

一般的に、金融機関との協議を経て、融資条件に一定の猶予(金利減免・返済期間の先延べ等)のある企業が該当します。

■ その他要注意先(=要管理先(上記)に該当しない要注意先)
・『業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者』

一般的に、短期的な赤字ではあるが債務超過等の経営危機には至っていない企業などが該当します。

なお、形式的には上記に該当するものの、「正常先」(上記)として判定すべきケースも例示されています。
・赤字の発生原因が創業赤字(創業後5年以内)であって、その業況が当初計画から大幅な乖離なく進捗している場合
・赤字の発生原因が一過性のものであって(資産売却損など)、早期の黒字化が確実と見込まれる場合
中小・零細企業で赤字となっている債務者で、返済能力について特に問題がないと認められる場合(次回解説予定)

破綻懸念先

破綻懸念先とは、現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)をいう。

(出典:金融庁「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル」)

一般的に、恒常的な赤字となっている企業、実質債務超過に陥っている企業、貸出金が延滞状態に陥っている企業などが該当します。
すなわち、金融機関にとっては債権の回収可能性に深刻な懸念が認められる状態といえます。

なお、形式的には上記に該当するものの、「要注意先」(上記)として判定すべきケースも例示されています。
・金融機関等の支援を前提として経営改善計画等が策定されている場合
 ただし、経営改善計画等の合理性&実現可能性の観点から下記の条件をすべて満たす必要があるとされています。
 ① 経営改善計画等の期間が5年以内であり、その実現可能性が高いこと
 ② 計画終了後、その企業の債務者区分が「正常先」となることが見込まれること
 ③ 企業自身や支援金融機関における合意形成がなされていることが文書等で確認できること
 ④ 金融機関による支援の内容が債権放棄などの資金提供を伴わないこと

中小・零細企業等の技術力、成長性などの総合的判断(次回解説予定)

実質破綻先

実質破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者をいう。

(出典:金融庁「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル」)

一般的に、法的にはまだ経営破綻に至っていないものの、実質的に営業実態がない(全営業所廃止など)企業などが該当します。
他方、事業継続下で「実質破綻先」に該当するケースはあまり想定されません。

破綻先

破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者をいう。

(出典:金融庁「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル」)

破産・会社整理・手形不渡りによる金融機関取引停止など、法的に経営破綻に陥った企業が該当します。

 

税理士&中小企業にとってのポイント

このように、金融機関の「融資格付」上のポイントは「債権を回収できるか否か?」というシンプルな原則から読み取ることができます。
裏を返せば、税理士&中小企業の立場からは「『借入金の返済計画に関する実現可能性』を納得してもらえるか?」が肝要といえます。

ただし、中小企業については、短期的な経営成績のみに左右されず、技術力や成長性といった要素にも一定の配慮が必要とされています。
そこで、今回のエッセンスを抑えたうえで、次回は「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」について解説してまいります。

 
▼税理士のための融資相談入門▼
第1回:中小企業&税理士が「金融機関の行動規範」を知るためにすべきこと
第2回:意外とシンプルな「融資格付」の評価基準
第3回:最大のポイント!「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」(次回)

 
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